第2期キックオフ 第1部講義メモ
00:04:48 ゲンロンセミナー2期PV
00:05:28 冒頭いきなりZ世代感のあるムービーから入りましたが…(國安)
00:05:59 登壇者紹介
國安孝具です。ゲンロンでは編集をしたりカフェで受付をしたりしています(國安)
普段は建築の勉強をしている
「ゲンロンでは肩身が狭いという建築…」(國安)
「リング的な…」(栁田)
「むしろ活躍のしどころなんじゃないの?」(青山)
栁田詩織です。ゲンロンでは編集を主にやっています(栁田)
哲学倫理学を勉強している
ゲンロン編集部で働いている青山俊之です(青山)
専門は言語人類学
研究テーマは自己責任論
ゲンロン編集部で働いている住本賢一です(住本)
専門は映画史・映画理論
ゲンロン編集部の植田将暉です(植田)
専門は憲法学
「昨日修士論文を提出してきました。僕が一番若いので…」(植田)
「死ぬかと思いました」(植田)
00:10:10 ゲンロンセミナーとは
第2期 『1000分で「まちがい」学』 チケット発売中!
けっこう売れているんだという説が(植田)
「学問は長くしゃべるから面白い」
2月から7月にかけて連続月1回の講義をしていくシリーズイベント
ふだんのゲンロンカフェはエンタメ寄りの対談・座談会がメインだが、ゲンロンセミナーはもう少しアカデミックでかちっとした講義をする
大学やカルチャーセンターの講義に近いが、院生チームが聞き手として加わることで対話から学びを深めていく
2023年のゲンロンカフェ10周年事業として始まり、今年が第2期
第1期『1000分で「遊び」学』
去年は國安さんのかわりに伊勢康平さんが聞き手を担当
若手研究者を院生チームがロングインタビューする学問のミライもあります
講義だけでなく、終了後のアフタートークも盛り上がる
他のカフェイベントと違い、原則土曜日14時開始で、終わるのはだいたい18時くらい。アフターに残りやすい
共通テーマのもとでの連続講義なので、自分の興味と離れた分野の知に触れられる
いわゆる誤配が起きる(住本)
00:19:04 第2期 『1000分で「まちがい」学』
今期はバナーもがらっと変わっていい感じです(栁田)
キリッとしてます(植田)
かっこいいよね(青山)
なんかガムっぽくてね…さわやかな感じ(國安)
ゲンロンセミナー通し券(全5回+アフターセッションに参加でき、配信視聴も可能)
【ゲンロン・セミナー 第2期 1000分で「まちがい」学】全6回通し券 | Peatix
通し券購入者にはセミナー受講スタンプカードを(第2期もたぶん)もらえて、会場参加ごとにスタンプが溜まっていく楽しみもありますdotimpact.icon
00:19:40 第2期第1回「哲学とは何か?──「まちがい」をめぐる古代ギリシア哲学との対話」(2024-02-03)
00:20:11 manabu_kasai「初回から納富先生は衝撃1」
納富先生は古代ギリシア哲学の第一人者
私がこの回で言いたいことは、納富先生はえらい先生なのだが、それだけではなく、面白い先生だということ(栁田)
どれくらいえらいかというと、国際プラトン学会の元会長、世界のプラトン研究のトップ
だけではなく、「これ学会だけで聞いてるのもったいないじゃん!」というくらい話が面白い
プラトン学会の会長は日本初?(國安)
だと思う。そもそも海外で博士号を取ってるギリシア哲学の専門家が少ない(栁田)
納富先生は今新刊刊行ラッシュ
納富信留『新版 プラトン 理想国の現在』
納富信留『世界哲学のすすめ』
2月にもプラトンの本が出る
00:22:03 TNMC「納富さんのプラトン入門死ぬほど分かりやすくてオススメ。」
00:22:20 moriatyj「『ギリシア哲学史』は、網羅的で詳細な素晴らしい一冊。」
00:22:41 manabu_kasai「『ギリシア哲学史』も素晴らしいですよね」
しかも学部長…
「やばいっすまじで」(栁田)
00:23:24 moriatyj「プラトンは、レスラー志望だったらしいので、相撲との相性もあるのでは。」
00:23:45 第2回は臨床心理士の山崎孝明さんに話を聞きます(住本)
ゲンロンカフェではおなじみ
山崎孝明『精神分析の歩き方』
精神分析の知見を活かして、より一般的な臨床に活かしていこうという活動をされている
00:24:42 第3回は岡室美奈子先生をお呼びしての「まちがいと演劇」の話(青山)
専門はサミュエル・ベケット
「ゴドーを待ちながら」
早稲田大学の演劇博物館の館長
テレビドラマ研究も
ベケットのような難解な作家の研究とテレビドラマの研究がどうつながっているのかをお聞きしたい(青山)
00:27:15 第4回は吉川浩満先生をお呼びします(國安)
12月にも「『人文的、あまりに人文的』な、2023年人文書めった斬り!」 でゲンロンカフェに登壇
どうやってこんなに本を読んでいるんだと(國安)
吉川浩満さんも辻田真佐憲さんもそうですが、ゲンロンカフェに何度も登壇されていても意外と自分の講義をされることはなかったのかなと(國安)
00:27:45 TNMC「今回けっこうお馴染みの人多いのね」
吉川さんには理系枠という意味でも入っていただいていて、認知科学や進化論と人文学の知見を組み合わせた「人間とはなにか」についてのお話を聞きたい
僕は東さん、山形浩生さんなど二足のわらじのように複数の分野で仕事されている方が好きで、吉川さんも肩書が文筆家、編集者、配信者となっていて、二足のわらじどころじゃないという…(國安)
卓球も教えてらっしゃるとか(栁田)
スケジュールを詰めるときに「この日は卓球の指導があるんで…」と言われることも(國安)
吉川浩満『哲学の門前』には卓球のコーチをしている金髪姿の吉川さんの写真が載っている(住本)
00:29:41 第5回はゲンロンではおなじみの辻田真佐憲さんをお呼びします(植田)
00:31:14 Shukugan「辻田さん聞き手のイメージが強いから新鮮」
僕が辻田さんに送った企画書の仮タイトルは「近代日本はどこで間違ったのか」(植田)
近現代史はまちがいに満ちている
辻田真佐憲『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』
近代日本の間違いを考えつつ、間違いの歴史についても考えていきたい
今回のイベントでは辻田さんのガチの日本史観を聞きたい(植田)
00:32:42 アフターセッションについて
配信はなく現地のみで、受講者同士でこれまでの講義を振り返る回
前回は20人ほど参加
単なるアフタートークではなく、ワークショップ形式でやや違った雰囲気
00:36:49 青山俊之プレゼン
ディスコース研究
言葉の歴史を掘り下げる
自己責任の研究
2004年 イラク日本人人質事件
広辞苑第5版(1998年)には「自己責任」の項がない
2008年の第6版で登場
2004年ユーキャン流行語大賞ランクイン
しかし、新聞では90年代のほうが使われている
自己責任は現在政治的な言葉になっているが、日常的な規範意識、価値判断とも関わっている
不条理演劇
不条理:原因と結果が結びつかないこと
結果に対して本人の原因を責める自己責任論との関係
カズオ・イシグロ『浮世の画家』
ターニングポイントになった初期作品
00:47:52 manabu_kasai「『浮世の画家』はNHKでドラマ化されましたね」
00:48:14 TNMC「イシグロは英語そのものは大変平易なので原著で読むのもおすすめです!」
イシグロがこの作品を書いたのは1986年で、80年代前半・サッチャー政権下のイギリスの新自由主義的時代を自身の経験を踏まえて書いている
政治的変革の時代に果たすべき「芸術家の役割」
テレビドラマ(当時のイシグロの主なメディア)とは異なる文学の形式
羅生門モデル
一つの出来事に対する複数の語り
00:55:23 sion「藪の中」
信頼できない語り手
浮世の画家モデル
複数の出来事を1つの語りにまとめあげる
基本的にイシグロは一人称視点で書くから、いろんな出来事がその人の(信頼できない)語りによってつながっていく(栁田)
小説ならではの記憶のありかた
小野の自己欺瞞・トラウマ
小野と日本人
集団的な加害の記憶の難しさ
01:05:54 sion「謝罪論にも通じそう」
自己責任も一見個人の問題のようだが、集団とか文化の問題
孫の二重性
「心配しなくていい」
世代を超えた記憶の困難
忘却的なやり直し?
「まちがい」の想像力
戦争:不条理の最たる例
不条理さ、「まちがい」を描く芸術作品における人間文化の活力
ところでお気づきだと思うんですが、栁田さんはカズオ・イシグロをめっちゃ読んでいるようで…(國安)
「すいません、お酒もらっていいですか?」(栁田)
01:19:09 floatoo「シラピス美味しいですよねぇ🤩」
01:18:50 yamaza85「よーし現地行くぞ、住本さん、ブーメランにならないように」
01:18:29 栁田詩織プレゼン
私はカズオ・イシグロが大好きなので、青山に負けないぞ!(栁田)
カズオ・イシグロ『日の名残り』
「浮世の画家」の次の作品
イシグロ作品の特徴:信頼できない語り手
夕日:スティーブンスの晩年、沈みゆく大英帝国
『日の名残り』とまちがい
作品の読解と感動について
「私どものような人間は、なにか真に価値のあるもののために微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで十分のような気がいたします。」
まちがいは避けられないが、訂正したい(栁田)
自己欺瞞的なまちがいは、自分の習慣として生まれる(青山)
「訂正」も自分のやってきたことを正当化することになる
まちがいはその都度その都度見出していくしかない(青山)
「訂正可能性と自然・相撲・自己責任──いよいよ友の会第14期!院生チームが第13期を振り返りつつゲンロンの活動と自身の研究を語ります!」 のイベントで、まちがい学は失敗学とはどう違うのかというコメントが印象に残っている(國安)
失敗学は「まちがいをいかに無くすか」という学問
まちがい学は「どうせ我々はまちがうんだから、どう間違えるか、間違えたときにどうするか」という学問になる?
01:55:36 住本賢一プレゼン
山崎孝明先生紹介
精神分析を外に開いている人(青山)
山崎先生に聞きたいと思っていること
精神分析の人間観と「まちがい」
合理人ではなく「実際の人間」を扱う
人と人のかかわりにおける「まちがい」
セラピーやケアの場での「まちがい」
「まちがい」の本質
『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』
成功体験を手放せない
02:09:16 tokada「AI技術みたいな説明だ>適応しすぎて学習棄却ができず」
02:11:37 manabu_kasai「『失敗の本質』はビジネスパーソンの間でも、買って読まれてない本の典型ですね。同じ野中先生の本だと『アメリカ海兵隊』(今は改題されて別の本だけれど)を読んでからの方が何が論点かわかりますね。」
マシュー・サイド『失敗の科学』
医療業界:クローズド・ループ
航空業界:オープン・ループ
組織論的な失敗学
カール・ポパー
組織は人間だから文系的な訂正可能性にかかわると思っていたが、科学的な対象として反証可能性で分析されるのがおもしろい(栁田)
組織の中でミスを属人的なものにせず、それを一つのデータとして分析する(住本)
「まちがい」の本質→「まちがい」を認めずそれに向き合わないこと
東浩紀『訂正する力』
「訂正する力は現実から目を逸らすために使ってはいけません。」
組織論や商売ではフィードバックが数値的に返ってくるので科学的に扱えるが、一対一の対話ではコミュニケーションの成功が数では返ってこない(國安)
信頼がなければ「まちがい」を認められない
では、どうすれば他者を信頼できるようになるのか?
集団療法(オープンダイアローグ)
個人療法
→精神分析が「信頼」をつくるメカニズムについて山崎先生に聞きたい
カズオ・イシグロの話は人の語りが信頼できないという話だった。それを受けると、信頼を作らなければいけないと思う気持ちが、信頼を裏切られる経験によって厄介な関係になってしまう面もあるのでは(青山)
人を信頼するということは、防御を外すということで、つけこまれる隙をつくることになる(住本)
信頼というと大げさだけど、人間だいたいこう言ったらこう言うというような「お約束」で成り立って社会が回っている面があり、そこは最低限回復しなければならないのではと思う(青山)
02:33:19 第2回講師の山崎孝明さんがサプライズ登壇!
山崎孝明『精神分析の歩き方』最終章でカルトの話を書いている。精神分析はカルトになりがち(山崎)
構造上強いので搾取しようと思えばいくらでもできる
客や患者が搾取されていることに気づく、カルトの信者が気づく時に何がある?(住本)
そもそも何がカルトか? 立場によって変わる(山崎)
クライアントが何を気をつけたらいいかといえば、外でのつながりを持ち、開かれていること(山崎)
2者関係だと無理
「世の中は俺を攻めてくるかもないけどこの人は見放さないでいてくれる」というのが基本的信頼感
精神分析の古典的な治療論では分析医は中立的な存在で情報を出してはいけない
現実的にはそれは無理がある
僕の考えでは、セラピーだけですべてを解決できない(山崎)
精神分析において、学説の間違いは何で判断するのか?(植田)
この人にとっては間違いで、他の人には間違いじゃない、という事があるので、理論が並列されていく(山崎)
科学と違って反証可能性に開かれていないわけですね(住本)
山崎さんを怒らせるかもしれないことを言うと、マシュー・サイド『失敗の科学』の中で、反証可能性がうまく機能していない代表として心理療法士がディスられていました(住本)
それは常にある話なんで大丈夫!(山崎)
僕が「お約束」の話を出したのは、人同士のコミュニケーションでの信頼とあいさつのような社会のルールを守って社会的人間と判断されることは入れ子構造になっているところがあり、後者を無視すると何が起きているわからなくなることがあると思っているから(青山)
精神分析についても、対人で起きていることだけを見ると、社会で起きていることがわからなくなり、つじつまが合わないことが出てくるのでは(青山)
つじつまが合わないことを受け入れるという感じですね(山崎)
自分はスクールカウンセラーもやっていて、「学校の人」という立場で振る舞う時と、クライアントとの2者関係の時とでは全然違う(山崎)
社会性を身につけることと回復することはイコール?(栁田)
イコールではない。社会性どころじゃなく人とつながれない「重い」患者がいて、そういう人にはカウンセリングは意味がある(山崎)
しかしそういう重い患者は差し伸べた手をはたいてくる(山崎)
10年くらい前精神分析が人気だったころのイメージだと、カウンセラーとの対話で患者が涙して…みたいな感じだけど、そんな、ものは、ない!!!(山崎)
厳しい世界
「あなたDV受けてますよ」と伝えるのが今の基準では正しいけど、正しければ解決するわけではないので難しい
精神分析をされる方ってパブリックの意識は強いんですか?(青山)
それはぜひ拙著(山崎孝明『精神分析の歩き方』)をお読みいただきたいんですが…(山崎)
派閥や国によって違う
イギリスは国民保険のなかで精神分析があるので、パブリックの意識がある
日本は、精神病院を地方に追いやっているなど、今は変わってきたが意識は低い
公認心理士が国家資格になったのも最近ですしね(栁田)
国家資格になればいいというものでもない(「不倫がやめられない…」のような非倫理的な話題など)
東畑開人 文學界連載「贅沢な悩み」
青山さんに聞きたいんだけど、自己責任という概念はよくないんですか?(山崎)
僕はそこまで良くないと思っていない(青山)
イスラム国日本人人質事件をみたとき、自己責任論は単純に否定できないなと思った
自発性や内発性はプライベートなことなんだけど、今の自己責任論はパブリックなことに転じている。もう一度私的なものとして考えてもいいのではないか
自己責任という言葉がキャッチーだからどんどん突っ込まれる(住本)
僕としては個別の話の前の自己責任の歴史記述を研究している(青山)
山崎さんの本の中で國分功一郎さんについて触れていますが…(住本)
「責任の生成」ですね。責任はやっぱり大きいと思っていて…(山崎)
押し付けられた責任は頽廃形態
自己責任も他人に責められるのは違う
いまみんなが言う責任って認識の問題が多い。僕は責任って行為だと思う(青山)
國分さんも言っていますが責任はResponsibility(応答すること)だからそこで行為と結びついている(住本)
自己責任の話になってしまいましたが…(住本)
03:05:04 山崎さんから他には(栁田)
僕から言いたいことは、後でコメントを見るので僕に聞きたいことがあれば書いておいてくださいということ(山崎)
山崎さん本当にありがとうございました!(住本)